第1部 人付き合いのマナー
外部からの電話で社内の人を「●●さん」と呼ぶのは間違いです
上司でも呼び捨てにするのが社会人としてのマナー
社会人になると、オフィスで外部からの電話を受ける機会が多々あります。新入社員や後輩社員が電話を取る役目を任される職場もありますし、誰もいない時には先輩社員である貴方が電話を取ることもあるでしょう。
ただ、電話応対は避けて通れない業務です。
取引先などから自分の上司宛にかかってきた電話を取る際に気を付けなければならないのは、上司の呼び方です。
「佐藤部長はいらっしゃいますか?」
つい
「佐藤部長は外出中です」
と答えてしまったこと、経験はないでしょうか?
社外の人と話す場合には、
「佐藤」、「部長の佐藤」
と呼び捨てにするのが、ビジネスマナーなのです。
なぜかというと、
「●●さん」「●●部長」というのは、相手を敬う言い方なので、社外の人と話す時に社内の人間を指す表現としてはふさわしくないのです。
やはり、日本的な感覚でいうと、目上の人を呼び捨てにすることに抵抗を感じることは良く分かりますが、同じ会社のい社員は家族同然という日本人の考え方が元になっているのです。
ちなみに、こちらから、取引先に電話をかけた場合はどうでしょうか?
「●●部長様」「●●部長さん」ですと敬称が二重になってしまうので、「●●部長」「部長の●●様」「●●さん」などと言うのが正しいのです。
お詫びの連絡をメールだけで済ませるのは止めましょう
文章よりも直接話すことで、こちらの気持ちが相手に伝わります
仕事をしていると、思わぬトラブルが発生し、相手にお詫びしなければならない事態に見舞われることが普通にあります。トラブルを認識次第、まずは先方へ連絡を入れて、状況を説明し、お詫びする必要があります。
しかし、時間帯によっては相手に電話がつながらない、担当者が会議中、出張中ということもあるでしょう。そうした場合、ひとまず、事情を説明してお詫びの言葉を添えたメールを送るというのも、方法の一つです。
しかし、お詫びのメールを送信しただけで済ませて、それで安心するのは、大間違いということを肝に命じて置きましょう。メールを送信した後に、必ず電話を入れるか、場合によっては先方に謝罪に行きましょう。
そもそもメールには、「時間帯を問わずに送受信できる」「互いのやりとりが記録として残る」といった情報伝達手段としてのいメリットはあります。しかし、メールはお詫びやお礼のような”心”を伝えるには適切ではないのです。
メールの文章によっては先方に誠意が伝わらない危険性が高いからです。電話であれば、あなたの感情が声、態度に表れて、ストレートに申し訳ないという気持ちを伝えることができるのです。
相手にとっても電話なら直接文句を伝えることができます。相手の怒りの気持ちをしっかり受け止めてこそ、きちんと謝罪したと言えるのです。
誰でも怒られるのが良い気分ではありません。しかし、ちょっとした勇気を出して相手の声を直接聞きましょう。
しっかり相手の怒りの気持ちを受け止め、謝罪の気持ちを伝えることで、そのトラブルをきっかけとして、相手から今以上の信頼を勝ち得る可能性もあるのです。
訪問先で自分の手荷物は、椅子や机の上ではなく、床の上に置きましょう
手荷物を置く場所や上着を置く場所にも気を付けることが大切です
仕事の打ち合わせや交渉ごとなどで取引先を訪問する際や、プライベートで個人宅を訪問する際にも、ビジネスマンとして様々なマナーがあります。
それでは、鞄やバッグなどの手荷物は、着席した際にどこに置くべきか知っていますか?まず、テーブルの上に手荷物を置くという人は、普通の感覚を持ったビジネスマンは間違えていることはわかるでしょう。隣の空いている席に置くという感覚を持つビジネスマンもいませんよね。
書類を入れる大きな鞄は、自分の足元の床の上に置きましょう。女性が持つ小ぶりのバッグは自分が腰掛けた椅子の背と体の間に置きます。
ただし、先方に差し上げるために持参した手土産は、決して床の上には置かないようにしましょう。
また、コートなどの上着は、先方からハンガーを勧められなければ、椅子の背もたれにかけるか、自分の荷物の上に置くのが良いでしょう。
ちなみに、冬のコートなどは、玄関前、ビルであればビルに入る前で脱いでたたんで持つようにしましょう。

会議中に携帯電話が鳴り、周囲の了承を得ず出るのはマナー違反です
どうしてもでなければいけない場合は、周囲に一言お詫びをしてから電話にでるようにしましょう
携帯電話(スマホ)が一般的となり、ビジネスシーンにおけるマストアイテムとなっています。また、あなたも相手も必ず携帯電話(スマホ)を必ず持っていると確信している時代となっています。
そのため、あなたも相手もお互いに電話に出てくれるものという思い込みのうえで、電話をかけることがビジネスシーンでも多いのが実情です。そのため、ビジネスシーンにおける携帯電話(スマホ)の使用に関しては、気を付けなければいけないポイントがあります。
まず、1つ目は、「非通知」です。
仕事でお世話になる方に「非通知」でかけるのは失礼です。同様に、こちらから携帯電話に電話する時も、「非通知」でかけてはいけません。自分の職場から先方の携帯電話に電話をかける場合、職場の携帯電話が非通知になっていないか確認することが重要です。
2つ目は、かかってきた電話を受ける場合です。
会議中や打ち合わせ中に電話がかかってきて、自分の携帯電話んぼ着信音が鳴るのは周囲に対して失礼です。特に訪問する際や、自社の会議、式典などに出席する際などには、携帯電話(スマホ)の電源を切るかマナーモードにし、電話には出ないようにすることが重要です。
ただし、ビジネスシーンではどうしても「会議の時間帯の重要な電話が入る」「会議中に取引先から重要な決定が連絡される」ということも想定されます。このように、どうしてもでないといけない緊急の要件がある場合は、事前にそのことを話をして了承を得て置きましょう。会議が始まる冒頭でも構いません。
そのうえで、電話がかかってきたら、「申し訳ありません」と周囲に一言お詫びしてから、その場を離れるようにしましょう。そして、その場を離れた後に、周囲に迷惑をかけないかどうかを今一度確認してから、電話にでるようにしましょう。
お腹に手をあて、肘を張るお辞儀は、丁寧なお辞儀ではありません
会釈、普通のお辞儀、深いお辞儀で腰を曲げる角度がそれぞれ違うのを理解する
丁寧なお辞儀は、相手への感謝や尊重の気持ちを伝えることができるだけでなく、あなたが礼儀正しく品格のある人であることを表します。そのため、適切なお辞儀の仕草を確実に覚えておくことが、”できる”ビジネスマンには重要です。
例えば、
○道や廊下ですれ違う際の会釈
→腰を15度程度程度曲げて頭を下げる
○来客への挨拶などで最もよく使われる普通のお辞儀
→腰を30度程度曲げて頭を下げる
○冠婚葬祭、お詫びや頼み事をする時、重要な方への深いお辞儀
→腰を45度程度曲げて頭を下げる
ただし、角度はあくまでも目安であることは認識しておきましょう。お辞儀が長く深いほど、相手に対する気持ちも大きくなると思うようにしましょう。
次にお辞儀をする時の動作です。
お辞儀をする時は相手の目を見て、上体を倒したところで一呼吸止め、ゆっくり上体を起こして、もう一度相手の目をみるようにします。相手の目はしっかりとみることが大切です。そして、両腕を体の側面に自然に下ろしましょう。その際にひじは張らないように注意しましょう。手を組む場合は、指先を揃えることに注意しましょう。
姿勢が悪いままのお辞儀やペコペコと何度も頭を下げるお辞儀は、気持ちの良いものではありませんので避けるようにしましょう。このようなお辞儀は、品格を損なうだけではなく、相手への気持ちも伝わりません。

手紙の宛名で「社長様」、送付状の宛名で「各位様」は間違い
宛名では先方の社名は略さず、正式な名前を書くようにする
ビジネスマンは、お礼状や案内状など社外の方々に手紙を出す機会が増えます。手紙の文面そのものも大事ですが、宛名の書き方にも間違いや失礼があってはいけません。
○先方の会社名は正式名称を書きます。
「株式会社」も「(株)」と略さないようにします。ここで重要なのは、「●●株式会社」なのか「株式会社●●」なのかはしっかり確認するようにしましょう。
○宛名は、社名(団体名)、部署名、役職名、氏名の順で書きます。
○宛名には必ず敬称を付けますが、個人には「山田様」のように「様」を、組織には「株式会社山川物産 営業部御中」のように「御中」と書きます。
ちなみに、「殿」という敬称もありますが、ビジネスの手紙や文書における個人の敬称としては「様」の方が一般的です。
○敬称は重ならないようにします。
「社長」「部長」などの肩書はそれだけで敬称になるので、「山田部長様」と書くのは誤りとなります。
こういう場合は、「部長 山田一郎様」とフルネームで書くのが丁寧です。
また、「●●社御中 山田様」のように「御中」と「様」が重なるのもNGです。
次に、同一文書を多数の社外の関係者に送る際についてです。
この場合、文書の宛名のところに「お取引先各位」「会員各位」などと書きます。「各位」は「皆様」という意味の敬称ですので、「お取引先各位様」「各位様」「各位殿」と書くのは敬称が二重になるので間違いとなります。
この点は、特にメールで一斉送信する際に、間違えることが多いものですので、注意しましょう。
また、手紙の封筒の宛名で「●●会社各位」などと書くのもふさわしくありません。前述の通り、封筒の表面には「●●株式会社御中」と書くようにしましょう。
上司からの指示に「できません」「無理です」と答えるのはNGです。
難しい時は断るのではなく、ポジティブな代替案を出す
新人の間は、OJTの一環で、上司や先輩の手伝いをすることが多いです。新人であれば、知識や技術がまだ未熟で仕事にも慣れていませんから、「今日中に」と頼まれた仕事が、指示どおりにできないこともあると思います。また、仕事の優先順位を付けることもまだ難しいでしょうから、仕事によっては、手を付けられないと判断することがあるかもしれません。
そういう場合、「できません」「無理です」と上司や先輩の頼みや指示をストレートに断ってしまうのは止めるようにしましょう。あなたの印象が悪くなるだけではなく、それ以上に頼みごとをされなくなってしまい、経験を積むチャンスを失うかもしれないからです。
こういう場合、否定的な表現「できない」「無理です」は使わないことが重要です。「本日中は無理ですが、明日の午後までであればできると思います」と必ず代替案を交えて返事をすれば、相手に与える印象はとても良くなります。
ただし、できないと分かっていることを「できる」と安請け合いすることは論外です。
上司にLINE を使って病欠の連絡をするのは好ましくない
相手の忙しさを気遣って電話を避け、SNSで連絡したものの…
朝起きたら体調が優れない。いつもは頑張って行くが、今日はちょっと…。午前は休んで、午後から出社したい…。
なんてことは、ビジネスマンを長年していれば、一回はあるシチュエーションだと思います。そんな時は、職場に連絡をしなければなりません。
忙しい上司を気遣い、電話ではなく、LINEで「今日は休みます」「遅れます」とメッセージを送信。もしくは電話をかけたけれど、早朝だから誰も出ないのでLINEで連絡した。そんな経験はありませんか?
最近では仕事上のやりとりにLINEなどのSNS、メッセージツールを使うことに、さほど抵抗はないかもしれません。実際に10代から20代の若者は、LINEは電話以上に身近なツールと考えているようです。つまり、SNSでの病欠連絡=非常識という感覚が薄まっているのです。
しかし、ビジネスシーンで病欠や遅刻の連絡をSNSやメッセージツールだけで済ませてしまうのは、マナーとしては好ましくありません。仕事を休む側の配慮としては、一応電話で状況を知らせるべきでしょう。
理由は、急な休みは、会社にとっては、仕事に滞りが起きたり、あなたの仕事を他のスタッフに代わりに対応してもらうための引き継ぎなどが発生するからです。「いや、私の仕事ってたいしたことないから…」なんて考える方も中にはいますが、そんなことはありません。一人、一日でも欠けるとその分、他のスタッフに負担がかかり、結果として組織全体として、ベストな状態ではなくなるからです。
では、どうするのがベストな対応でしょうか?
SNSやメッセージツールで病欠や遅刻の連絡をするのがいけないわけではありません。その後、状況を見て数分で良いので電話をかけるようにしましょう。
SNSやメッセージツールでの連絡は一方通行になりがちです。あなたが休むことで職場では困っている同僚がいるかもしれません。1本電話を入れて、何か困っていることがないかを聞くようにしましょう。
また、いざ病気が治って出社、という時の気まずさを緩和することもできますので。
なお、無断欠勤は、ビジネスマンとしてだけではなく、社会人としてあり得ない行為であることは言うまでもありません。

お盆から直接お客さまにお茶を出すのは不作法
テーブルの端のお盆を置いて、一人ずつお茶を出す
会社にいらっしゃったお客さまへの応対もビジネスマンには重要な仕事の一つです。応接室に通されたお客さまにはお茶を出すのが通常ですが、このお茶の出し方についても、ビジネスマンとして覚えておきたいマナーがあります。
お客さまが一人であっても、お茶はお盆に載せて運びます。お盆には湯呑みと茶托と、テーブルや湯呑みなどを拭くための布巾を載せます。茶托は湯呑みの下に敷く受け皿ですが、運んでいる途中でお茶がこぼれて濡れてしまうといけないので、湯呑みと茶托は重ねずに運ぶのが重要です。
次に、お茶を出す時ですが、下座側のサイドテーブルかテーブルの端にお盆を置き、茶托に湯呑みを載せて、上座のお客さまからお茶を出します。この時、お盆を持ったまま移動してお茶を置くのは好ましくないのです。
茶托は右手で持って左手を添えつつ、お茶をお客さまの下座側から出すのが基本ですが、会議の邪魔になるようであれば、上座からでも構わないので、覚えておきましょう。
湯呑みはお客さまが手に取りやすいように正面か右手側に置くのが基本ですが、もし、そこに書類などが置いてある場合は無理に置こうとせず、邪魔にならないように置くと良いでしょう。
お客さまの座り方、会議や話の盛り上がり、資料等の位置等、その場の様子を見ながら、臨機応変に対応するようにしましょう。

返信用封筒や返信用はがきの宛名の「行」を消さずに出すと無礼
「行」を消して「様」「御中」など敬称を書き加えてから返信する
社会人になると礼状や案内状など社外の方々に手紙を出す機会が増えますが、業務に関する手紙を受け取る機会も増えます。
メールなどSNSツールが全盛である今の時代であっても、返信用の封筒を同封した封書や往復はがきで案内状や招待状を受け取る機会もまだまだ多いと思います。またビジネス上だけではなく、プライベートでも、若い方は特に、友人や同僚からの披露宴の招待状が届くことも多いのではないでしょうか。
この返信用の封筒や返信用のはがきを出す際に気を付けなければならないのは、その宛名です。
受け取った返信用はがきや返信用の封筒の表には、送信者の住所や宛名が書かれています。そこには宛名として「株式会社●●行」「山田太郎行」などと、社名や名前の後に「行」が付いていることと思います。
そのまま出しても相手には届きますが、マナーとしてはNGとなってしまいます。なぜかというと、相手を呼び捨てにしていることになるからです。
この場合、「行」を斜めの二重線で消して、
・個人宛て→「様」
・会社や部署宛て→「御中」
という敬称を、その横に書くのがマナーなのです。
また、返信用はがきの裏には「御出席」「御欠席」「御住所」「御芳名」と書かれているかと思いますが、「御」と「御芳」はこちらに対する敬意を示した敬語なので、これらもすべて二重線で消すことがマナーなのです。
ちなみに、あなたが返信用封筒を同封した封書や往復はがきを、先方に届ける時も同様となります。返信用封筒やはがきの表に、送信先である自分の名前の下に「行」を付けるのを忘れないようにしましょう。

祝儀袋や不祝儀袋を購入時のビニール袋に入れて持参するのは無作法
祝儀や香典を清い状態で持参するため、ふくさに包んで会場に持参するように
年齢を重ねると共に、結婚式や葬式など冠婚葬祭の場に行く機会も増えてきます。結婚式であればお祝い、葬式であればお香典を相手に渡すのがしきたりです。
結婚式のお祝いは、挙式前に相手のお宅に配送する、もしくは直接届けるのが丁寧な方法です。ただ、品物ではなく、お祝い金であれば当日、会場に持参しても構いません。
基本的に、ご祝儀もお香典も現金は専用の袋に入れるのが通常です。
祝儀は「祝儀袋」、香典は「不祝儀袋」に入れます。どちらも最近は、近くのコンビニや薬局でも購入することができるので、いざというときには困りません。
ただ、通常はお店ではビニール袋に入れて売られていますが、これに入れたまま会場に持参している方はいませんでしょうか?
「祝儀袋」や「不祝儀袋」は、届ける前に袋が汚れないよう、「ふくさ」で包むのが作法になります。
「ふくさ」とは、絹などで作られた四角い布のこと。風呂敷の小さい物と考えていいと思います。「ふくさ」の色ですが、結婚式の時は上品な赤やオレンジなど「暖色系」のものを、葬式の時は紺やグレーなどの「寒色系」を使うのが基本です。
万が一、「ふくさ」を用意するのを忘れた場合、きれいな白いハンカチなどで代用しても構いません。

招待された結婚式に欠席する場合、返事をあまり早く送るのは失礼
返信はがきにはお祝いの言葉と欠席の理由を書くようにしましょう
結婚式や披露宴の招待状をいただいたら、必ず出欠の返事をします。
正式な返事は、電話やメール、口頭ではなく、招待状に同封された返信用はがきを使って行うのがマナーです。
招待状を受け取ったら、できるだけ3日以内に、遅くても1週間以内にはがきを投函するようにしましょう。何も書かないと味気ないので、お祝いのことばを一言書き添えて送るのが、とてもスマートなやり方です。
せっかくの招待ですが、どうしても欠席せざるを得ないという場合もあると思います。
例えば、
・身内に不幸があった場合は、両親や配偶者、子供なら四十九日か三十五日の忌明けまで
・祖父母や兄弟姉妹なら初七日が終わるまで
は、結婚式や披露宴への出席を控えるのが一般的です。
この結婚式や披露宴を欠席する場合の返信はがきの投函には注意が必要です。
やむを得ない事情があるとはいえ、招待状を受け取った当日など、早すぎるタイミングで返信はがきを送るのは失礼です。
欠席の返事の場合は、相手の気持ちを考えて、少し、遅めに出すようにしたほうがマナーとしては良いでしょう。
なお、返信はがきには、お祝いのメッセージと欠席の理由を書き添えましょう。
欠席の理由は具体的には書く必要がありません。特に身内の不幸が理由の場合は、慶事に水を差さないために理由は書かないようにしましょう。
また、出席ができなくても、お祝いを贈ったり、式当日に会場へ祝電を送ったりすれば、お祝いの気持ちはしっかり伝わるでしょう。

来客を部屋の出入口近くの席に案内するのは、マナー違反
入り口から遠いほうが上座、近いところが下座
会議室や食事の席では、洋室・和室にかかわらず序列に従って座る席次が決まっています。どこに座ってもいいわけではありませんので、注意が必要です。
基本的に、
・出入口から遠い場所が、上座
・出入口に近い場所が、下座
となります。
洋室では、最上席の右隣りが左隣りよりも上となる「右上位の原則」があります。和室では、反対に左隣りが右隣りよりも上という「左上位の原則」になります。
ただし、これはあくまで原則になります。出入口の位置、窓からの眺め、和室なら床の間の位置などによって、席次が少し変わってくることがありますので、こちらも注意が必要です。
応接室や会議室にも上席と末席があります。案内係はお客さまに必ず上席を勧めます。
上席は、
・出入口から遠い席
・一人がけの椅子より長椅子のほう
となります。
迎える社員側は下座側に座りますが、職位の低い人は出入口に最も近い末席に腰掛けるようにしましょう。
ちなみに、お客さまを応接間まで案内したら、必ず軽くノックしてからドアを開けましょう。
ドアの開けるときは、
・外開きのドアは、引いてお客さまを先に通す
・内開きのドアは、先に入ってドアを押さえながら招き入れる
席次については、ビジネスマンにとっては基本中の基本となるものです。
お客さまをお迎えする際、逆にお客さまとして訪問する際、マゴマゴせずにスマートにできるように、しっかり覚えておきましょう。





通夜に参列した場合、通夜振る舞いを断るのは故人の供養にならない
通夜振る舞いは故人との最後の食事です。故人の思い出話を遺族と語りましょう
年齢を重ねると葬儀に出る機会も増えてきます。葬儀に関する基本的な知識を身に付けておくことは、大切です。
宗派や地域によって違いはありますが、仏式の葬儀では、基本的に
通夜→葬儀→告別式→出棺→火葬
の順で行われます。
本来は、通夜は遺族などの親族や親しい人たちが故人の遺体とともに最後の夜を過ごす儀式でした。現在では、故人と縁のあった人たちが故人を偲ぶために集うものとなっています。特に最近では、昼間に行われる葬儀・告別式に出られない人が、通夜に参加するということが一般的になってきています。
僧侶の読経、焼香の後には、通夜振る舞いがあります。
この通夜振る舞いとは、喪主や遺族が弔問客に食事やお酒を振る舞うことです。
葬式に出て飲み食いして帰るのは何だか申し訳ない、勧められても遠慮するのがマナーではないかと考える人がいるかもしれません。
しかし、遺族としては故人の思い出話なども聞きたいので、遺族から勧められたら参加し、料理には口を付けるようにしましょう。
ただし、振る舞いだからといって、長居や飲み過ぎは止めましょう。あくまで通夜の振る舞いであり、宴会ではないので、大声で話したり歌ったり、お酒を飲みすぎたりしないようにすることが、重要です。
通夜の翌日に、葬儀以降が行われます。現代では、葬儀と告別式は合わせて行われるケースがほとんどです。しかし、葬儀というものは、もともと、近親者が故人の成仏を祈り、告別式は成仏した故人に生前に親交があった人々が最後のお別れをするという、それぞれ別の意味合いがあったのです。
なお、通夜と葬儀・告別式のどちらにも参列する場合、
それぞれ香典を用意する必要はありません。
通夜の受付で渡せば大丈夫です。

紙袋に入れたままの状態で手土産を渡すのは失礼
手土産を渡す時は、紙袋や風呂敷から品物を取り出す
ビジネスにおいてもプライベートにおいても、訪問先にお菓子などの手土産を持参するのは、社会人としての気遣いの一つです。上司のお供で、部下を引き連れて、手土産を持参するシーンもよくあることでしょう。
手土産を訪問先の近くやその最寄り駅の近所などで購入するのは、NGです。
せっかく持参するのであれば、相手に喜んでもらえる物を事前に用意しましょう。せっかく持参したものでも「近くで間に合わせた」なんて受け取られるのは避けたいですよね。加えて、訪問先の人数なども考慮して品物を選ぶようにしましょう。
品物は風呂敷に包むか、紙袋を持参します。
手土産は床に置いてはいけません。お菓子などの食べ物はもってのほかです。この点は、ついついやってしまう方もいるので注意しましょう。
手土産を渡す時は風呂敷や紙袋ごとではなく、
品物を取り出して、その正面を相手に向けて両手で差し出すのが正式なマナーです。
ただし、ビジネスシーンで気軽な気持ちで差し上げるような場合は、「袋のままで恐縮ですが…」と断って渡すようにしましょう。
また、風呂敷や紙袋は折りたたんで持ち帰ります。相手と会う場所が自宅や会社でなければ、持ち帰りやすいように折りたたんだ紙袋を品物の下に敷いて渡しても良いのです。
訪問先で座った椅子を元に戻さず退出するのは、不作法
訪問した際の振る舞いが、商談の成否に影響するかもしれません
打ち合わせやプレゼンなどで取引先の会社を訪問して、会議室などに通された際、状況によっては、自分たちが来客として上座に通されます。
ちなみにですが、上司や先輩と同行して、あなたがメンバーの中で一番立場が下の場合は、来客の末席に座るのがルールです。
なお、訪問先の方と自分たちが初対面の場合は、部屋に通されてから、きちんとあいさつをして名刺交換をします。
名刺交換は、
(1)目下の者から目上の者に差し出す
(2)訪問した側が先に出す
(3)相手が複数の場合、上役から順に名刺交換していく」
などの原則がありますので注意しましょう。スムーズな名刺交換は、その後の商談がスムーズにいくなどするため、相手の好感度も上がるのです。
名刺入れから名刺を取り出したら、汚れていないかなどを確認しましょう。
そして、相手が読みやすいように名刺の向きを変えて、社名や氏名をしっかり名乗ります。
相手も名刺を取り出していたら、相手が名乗るのを待ってから、互いの名刺入れの上で名刺交換を行います。
これが名刺の同時交換で、ビジネスシーンでは一般的です。相手の名前をしっかり見て、名前の読み方などを確認しましょう。
用事が済んだら、先方に貴重なお時間をいただいたことに感謝を述べて、丁寧に挨拶をして帰ります。
自分が座っていた椅子から立ち上がった後、椅子は元の位置に戻しましょう。
間違ってもゴミなどは残していかないようにしましょう。
訪問時の態度が商談の成否に影響すること多いものです。マナーを忘れずに礼儀正しく振る舞うことが重要です。
個人宅訪問時の「5分前行動」は、相手を困らせる行為
訪問者を受け入れる準備もあります。個人宅は少し遅れても問題ありません
「5分前行動」という言葉は、ビジネスのみならず、部活動など様々なシーンで利く言葉だと思います。大抵の人は、遅刻厳禁、時間厳守の精神として身についている習慣ではないでしょうか?
ビジネスの世界では、先方へのアポイントの5分前には到着するという習慣が身についている人がほとんどだと思います。
しかし、この「5分前行動」は、ビジネスの場面ではなく、プライベートでの訪問だとしたら、相手には歓迎されない行為かもしれません。
個人のお宅である場合、先方は支度や準備をしてくれていることでしょう。約束の時間に整えるのを目標に、時間ギリギリまでかかっているかもしれません。
そうした先方のことに配慮し、個人宅を訪問する場合は、ほんの少し約束の時間に遅れるくらいが良いのです。
また、訪問時の日時を決めるときも、先方の都合を予め聞いておき、辞去する時間も予め伝えておくようにしましょう。
Eメールに署名が付いていないと、いざという時に相手が困る
相手に配慮したメール送信をするようにしましょう
いまやEメールはビジネスには欠かせない連絡ツールとなっています。
メールでのコミュニケーションは電話と違い、相手の声も聞こえませんから、様々なことに配慮する必要があります。
例えば、メールのアプリケーションには、あなたの会社や部署名、会社の所在地や電話番号、メールアドレスなどを記載する「署名」の機能があります。
この署名ですが、きちんと設定しているでしょうか?部署異動、支店異動の際にも、きちんと変更していますか?
署名を入れずにメールを送った場合、先方はあなたの名前とメールアドレスは分かりますが、電話番号を把握していない可能性もあります。メールの内容について急ぎ確認したい場合に電話番号が分からず困ってしまうという事態を招くかもしれません。
その他にも、同じ内容のメールを複数人に一斉に送ることができる「CC」と「BCC」の機能も便利ですが、状況に応じて使い分ける必要があります。
「CC」は、メールを受け取った人全員に、誰がこの内容のメールを受信したかが、メールアドレスの情報も含めて通知されます。そのため、メールで送った情報をメンバー全員で共有する必要がある場合には「CC」を使うほうが良いのです。
一方で、情報を共有する必要がなく、ましてアドレスなどの情報も知らせる必要がなければ、受診者のアドレスが他の受診者には表示されない「BCC」を使用するようにしましょう。
まだまだ、なんとなくなところが多く、共通したルールが確立していないメールですが、顔が見えなく、声も聞けないコミュニケーションツールであるからこそ、誰が読んでも分かりやすく、誤解を与えない簡潔な文章と、失礼にあたらない表現を心がければ、非常に便利で使いやすい連絡手段となのです。

キリスト教式の葬儀で「ご愁傷さまです」はタブーです
仏式以外に、神式、キリスト教式、無宗教と葬儀も多様化している
日本は仏式の葬儀に参列する機会が多いと思いますが、亡くなった方が信仰していた宗教によって、神道の神式、キリスト教などの葬儀が行われることもあります。
最近は、宗教色を排した「お別れの会」なども増えて、葬儀のスタイルは多様化しています。
いざというときに、マゴマゴしないように、それぞれの形式の大きな違いは覚えておくようにしましょう。
神式の葬儀では、受付か玄関前に水とひしゃくが用意されているので、ひしゃくで汲んだ水を3回に分けて、左手、右手を清め、口をすすぎます。
また、仏式の葬儀では個人との別れに「焼香」がありますが、神式では玉串をささげる「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」、キリスト教では花をささげる「献花」が行われます。
そのほか、覚えておきたいのは、お悔やみの言葉です。
「ご冥福」は仏式の場合だけで、キリスト教や神式では用いません。これは、キリスト教では亡くなった人は天国に行くので、死は必ずしも不幸ではないと考えるからです。
「ご愁傷さま」ではなく、「安らかな眠りをお祈りします」と親族の方にあいさつをしましょう。
披露宴で席次表やメニュー表をテーブルの置いて帰るのは失礼
新郎新婦の思いが込められたアイテムです、忘れずに持って帰るようにしましょう。
結婚式の披露宴に出席すると、受付で席次表が渡されます。席次表は披露宴の会場でどこに誰が座っているかを知らせるものです。
場合によっては、名前に加えて「新郎上司」「新郎高校時代の恩師」など肩書が書かれているときもあります。
結婚式の席次表は、新郎新婦がこだわりを持って作り上げたものであり、中には自分たちで手作りの席次表を作る方もいます。
結婚式は、新郎新婦が参列者を楽しませよう、感謝の気持ちを表そうとじっくり考え、工夫をしたものが詰まっているものなのです。
席次表は、そうしたアイテムの一つですから、決して会場に置いて帰るということはないようにしましょう。
また、席に着くと、そこには、その日の料理メニュー表が置かれています。新郎新婦は皆さんに楽しんでほしくて美味しい料理を選んだことでしょう。
席次表やメニュー表は参列者にとっても、結婚式を思い出すための良いアイテムとなります。
席次表やメニュー表をその場に残して帰ると、新郎新婦の思いも置き去りにしているようで、寂しい気がします。
忘れずに持ち帰るようにしましょう。
香典で「奮発して高い金額を包む」「きれいな新札を使う」はNGです
香典は亡くなった方との関係によって金額の目安が変わってくるものです。
葬儀に参列する時には、香典を持参します。
香典の金額は、亡くなった方との関係によって変わるので、次に記載する金額はあくまでも目安ですので、注意してください。
・上司:5,000円〜1万円
・上司の家族:3,000円〜1万円
・勤務先の同僚や先輩:5,000円〜1万円
・社員の家族:3,000円〜1万円
・友人や知人:5,000円〜1万円
また、故人の身内であっても原則として、喪主以外の人は香典を出します。
・両親:5〜10万円
・兄弟姉妹:3〜5万円
・伯父伯母:1〜3万円
・そのほかの親戚:5,000円〜3万円
香典で包む金額は、結婚式のご祝儀と違って、あまり高い金額にしないようにしましょう。お付き合いには何事もバランスが大事です。不相応に高額な香典を出すと、相手が対応に困るので、注意しましょう。
また、祝儀に使う現金は新札を使いますが、香典では避けるのが普通です。これは、準備していたように受け取られかねないからです。ですが、あまりに汚いお札も失礼ですから、新札を使う場合は一度二つ折りにして折り目を付けると良いでしょう。

祝儀袋、不祝儀袋の表書きに贈り主の苗字しか書かないのは失礼です
贈り主が複数の場合は、中袋に全員の名前を書きます
結婚式などで使う祝儀袋や葬儀なでで使う不祝儀袋には、「表書き」を書きます。
袋に結んである「水引」と呼ばれる飾り紐の上には、
結婚式であれば、
「御祝」「寿」「祝御結婚」
などと書きます。
一方、葬儀では、仏式の場合、
「御霊前」
と書きます。
なお、「御霊前」は多くの宗派で使うことができます。しかし、浄土真宗だけは、通夜も告別式も「御仏前(御佛前)」とするのが正式となります。
神道の葬儀では、「玉串料」または「御霊前」に、キリスト教は「お花料」など、宗教や宗派によって、表書きが変わるので、注意しましょう。
「御霊前」は仏教の葬儀だけではなく、他の宗派でも使えます。ただし、極楽浄土をイメージする蓮の花の絵が型押しされたような不祝儀袋は、仏式用の物ですので、注意しましょう。
水引の下には贈り主の名前を書きます。何人かで出した場合は、横並びで名前を書きます。書き方は上位者から下位者の順番で右から左に書き、友人グループで同格なら苗字の五十音順で良いでしょう。4人以上なら、「●●サークル一同」などと表には書き、中袋にメンバー全員の名前を書きます(中袋の表には金額も書きます)。この時、贈り主の名前は苗字だけにせず、フルネームで書くのが正式になります。
筆記用具は筆か筆ペンにし、万年筆やボールペンは避けるようにするのが良いでしょう。文字は崩さず書くのが、基本となります。
お詫びのための訪問時に、上座を勧められて座る行為はNGです
お詫びでの訪問です。部屋に通されたら着席せずに、立ったままで相手を待つようにしましょう
ビジネスシーンでは良いことなかりではなく、失敗をしてしまい、あなたが相手方に謝罪しなければならない場面もでてくると思います。
まず、基本的なことですが、お詫びをする際に、相手を呼び出すのは大変失礼です。こちらから、何を差し置いても、先方に出向かなければなりません。菓子折りなどのお詫びの品も忘れないようにしましょう。
この際は、お詫びであるということを考え、謝罪の気持ちが伝わるように、見た目が華美な品物ではなく、シンプルな品物を選ぶようにしましょう。
あなたの服装も浮ついたものは避け、シンプルな装いにします。
最近では、ビジネスカジュアルが導入されたり、夏の季節などはクールビズでノーネクタイの方も多いとは思いますが、お詫び訪問の際は、極力いや必ずネクタイを締めて訪問するようにしましょう。
部屋にとおされてからは、トラブルの度合いにもよりますが、基本的には相手が来るまで、着席せずに待つようにしましょう。
相手が入室したら、すぐにお詫びをし、着席を促されてから、座るようにしましょう。
ここで注意点ですが、謝罪で伺ってもあなたは来客となるので、案内係はあなたに上座を勧めるかもしれません。通常であれば、上座に座って全く問題ありません。
しかし、今回は謝罪で訪問しているわけですから、相手の好意で上座を勧められたとしても、遠慮した方が、あなたの人柄や誠意が伝わるものです。

上司や恩師への手紙の書き出しを「こんにちは」とするとカジュアルになり、ふさわしくない
改まった内容の手紙には、守るべきルールがある
親しい間柄の人とやり取りする場合の気楽なメールと違い、改まった用件で送る手紙には、それにふさわしい形式やマナーが存在します。
お世話になっている上司や恩師への手紙を「こんにちは」と書き出すのは、大人のマナーとしてはふさわしくありません。
最近では、メールやLINEなど正式に手紙を書くことが少なくなっており、LINEのようにチャット形式で上司と連絡を取り合うことも普通になってきています。いざ、正式な手紙を書く際に、戸惑うことがないよう、基本形は覚えておいた方が良いでしょう。
文章の冒頭にあいさつの「前文」、次に用件に触れる「主文」、最後に締めくくりの「末文」という形が、基本的な手紙の構成となります。
まず、前文は、「拝啓」や「謹啓」などの「頭語」からはじめ、その次に「うららかな春の日差しがここちよい季節となりました」などの季節に触れた時候のあいさつが入ります。続いて「いかがお過ごしでしょうか」などの安否の言葉を加え、前文の最後で「おかげさまで私は元気に暮らしております」などと、日頃のお礼などのあいさつを書きます。
なお、「前略」は前文を略す頭語なので、あらたまった手紙や、久しぶりに目上の方に出す時には使わないようにしましょう。
次に、主文では、「さて、この度は突然のお願いで大変恐縮ですが…、●●についてお力添えをお願いしたく…」などのように、「さて」「ところで」などの起こし言葉に続いて、用件を書きます。
最後に、末文は「季節の変わり目ですので、くれぐれも体調には…」などのように、相手の健康を祈る結びのあいさつを書きます。
締めくくりの「結語」は頭語が「拝啓」なら「敬具」、頭語が「謹啓」なら「敬白」などと頭語に対応した言葉がありますので、注意しましょう。
そして、日付、署名、相手の名前を丁寧にバランスよく書くようにしましょう。

旅館の床の間に自分で荷物を運んで置くのは不作法です
床の間は格の高い場所なので、荷物は絶対に置かないように
旅行先でも、ちょっとした振る舞いで、マナーに明るい人であるかどうかが表れてしまいます。
例えば、旅館では基本的に仲居さんが部屋まで案内してくれ、荷物も持って運んでくれます。
旅行での重い荷物なので、なんだか悪い気持ちがするのもわかります。しかし、仲居さんの立場にたつと、荷物を持たずにお客さまを案内するのは職務怠慢に思われてしまうので、この場面では、遠慮せずに手伝ってもらって構いません。
もちろん、横柄な態度になったりするのは言語道断ですし、仲居さんの心遣いに感謝すべきところを、無視して自分ですべての荷物を持っていくのは、配慮に欠けた行為と言わざるを得ないでしょう。
さて、旅館の部屋に入ってからも注意すべきところがあります。
部屋の中の「床の間」に荷物を置くのは、旅館に対して更に失礼であることを覚えておきましょう。
なぜなら、床の間はもともと仏具などを置いていた神聖な空間で、部屋の中で格の高い場所であるからです。そうした理由から、和室では床の間に近いところが上座とされているのです。
旅館ではお客さまを迎えるにあたり、床の間に花をいけたり、掛け軸を飾ったりしているので、床の間には絶対似に持つを置かないようにしましょう。

新郎新婦にお酒を飲ませすぎるのはマナーを知らない証拠
新郎新婦に恥をかかせないよう、悪ふざけは披露宴が終わるまで控える
披露宴では、新郎の友人たちが新郎新婦の席まで行って、あいさつがてら新郎にお酒を飲ませるという光景がよく見られます。
友人である新郎の晴れの舞台で、祝いたいという気持ちと披露宴を盛り上げたいという気持ちからの振る舞いでしょうが、主役である新郎にお酒を飲ませすぎるのはマナー違反です。
新郎が過度の酔っ払ってしまうと、結果的に新郎に恥をかかせてしまうことにつながるからです。
また、お酒が入って悪ノリするのは、最悪の行為といっていいでしょう。
例えば、余興で一部の人しかわからない話題、服を脱いだ裸芸などで、特に下ネタは最悪中の最悪と覚えておきましょう。余興はコンパクトにおさめ、何かを演奏するなら1曲にしましょう。歌も同様です。
スピーチする際の言葉使いなどにも、細心の注意が必要ですので、事前に推敲を重ねて、披露宴で使ってはいけない、使うべきではないことばが入っていないかを確認するようにしましょう。
また、友人との間だけで話すなら許されるような内容や失礼な軽口も、新郎新婦の親族や他の招待客に不快感を与えます。何より、新郎新婦に恥をかかせることになりますので、控えるようにしましょう。
冗談でも、過去の恋愛遍歴などを暴露することは、決してしてはいけません。下ネタと同レベル、いや一番話してはいけない最悪中の最悪なものと肝に命じておきましょう。付き合いが何十年であろうと厳禁です。
人生最大の祝宴である披露宴で、新郎新婦の面目を失わせることにならないよう、節度ある言動・振る舞いを忘れないでください。

お墓参りの時にろうそくや線香の火を息で吹き消すのはタブーです
お墓や仏壇では手であおぎ、その風でロウソクの火を消す
先祖を敬うために欠かせないのが、お墓参りです。
お盆と春分・秋分のお彼岸の時期や、故人の命日にお参りするのが一般的です。加えて、進学や就職、結婚、出産などの節目に、ご先祖さまへの報告のためにお参りすることも大切です。
最近は、仏壇のない家も多くなり、また転勤などで遠隔地にいる場合も多く、お墓参りの機会がなかなか無いという家も多いでしょう。なかなか無いからこそ、基本的な作法が覚えておきたいものです。
お参りの際は、お寺が管理運営している寺院墓地であれば、本堂の御本尊にもお参りするのが一般的です。納骨堂であれば必要はありませんが、昔ながらのお墓であれば、掃除することも大切な仕事の一つです。
掃除が終わったら。線香をあげて、故人にゆかりが深い人から順番に拝みます。ここで、ロウソクや線香の火を消す際には注意が必要です。
ロウソクや線香の火を消す際に、つい息を吹きかけてしまいがちです。たぶん、普段の生活の中での動作として身についているからでしょう。
こういう場合は、手であおいで、その風邪で消すということを覚えておきましょう。これは、生物や肉を食べる人間の息には宗教的な穢れが含まれているので息を吹きかけないというのが理由とされています。同様に、仏壇に線香をあげる場合も、同様に息で火をけしてはいけませんので、注意しましょう。
また、「墓石を洗うのに洗剤を使う」「墓石にお酒をかける」という行為も、墓石が痛むのでやめましょう。

友人宅に泊まる場合、キャリーバックをそのまま持ち込むのは不衛生です
家に入る前にコートを脱いで、靴を脱ぐときはきちんと揃えることを励行しましょう
「親しき仲にも礼儀あり」という言葉があるように、親しい友人の間柄でも最低限守らなければならない礼節・マナーがあるのです。
例えば、友人の家に泊めてもらう場合です。
友人宅に到着したら、玄関の呼び鈴を鳴らす前にコートやマフラーを外しましょう。これは、外で付いたホコリやチリを相手の家に持ち込まないための配慮として、日本では昔から行われている慣習です。ビジネスマンのあなたであれば、得意先に訪問の際に事前にコートを脱ぐことと同様なのです。
一方、西洋では、この逆です。コートを着たまま家に入り、勧められてから脱ぐようにします。これは、「あなたが望まないのに長居をするつもりはありません」という意思を示しているのです。
最近、旅行以外でもキャリーバックを利用する人が増えています。このキャリーバックですが、便利なのはいいですが、車輪の部分がどうしても汚れてしまいます。下の部分なので、使用している際は気に留めないのですが、相手の家に持ち込む際、友人以外の個人宅に持ち込む際には注意が必要です。
このキャリーバックですが、相手の家に持ち込む際には、車輪の部分を拭くようにしましょう。
次に部屋にあがる際ですが、玄関のドア背を向けたまま靴を脱いでから上がります。相手に完全に背と尻を向けないように、やや斜めの方向を向いて両膝をついて靴の向きを変えて揃えます。これは、帰る際に友人がわざわざ靴を揃えてくれなくても、そのまま帰れるようにするための配慮です。
ただここでも、つい横着して、つい自分の家のように習慣で、相手に背を向けて靴を脱いでいまいがちですので、注意しましょう。
靴は下駄箱があるなら、そちら側に近付けておくようにしましょう。

高級和食店や旅館では脱いだ靴を自分で揃える必要はない
下足番がいる旅館や店なら靴に扱いは任せるのが大人の振る舞い
個人宅を訪問した時の靴の脱ぎ方のマナーについては、前の章で紹介しました。
その他にも、
・訪問先のスリッパは素足で履かないようにする
・訪問先から帰る時には、まずスリッパを脱いで靴を履いてから、スリッパのかかとが入り口の方を向くように揃える
・スリッパはスリッパ立てに入れなくてもよいが、整えておく
といったマナーがあります。
しかし、旅行で旅館を使う時は事情が違います。
室内にあがる時に、入口に背を向けたまま靴を脱いで上がるのは、個人宅と同じですが、
靴の出し入れの係である下足番がいる旅館や店では、脱いだ靴を自分で揃える必要がないのです。
自分で靴を揃えるマナーが習慣として身に付いていると、人に靴を扱ってもらうことに違和感があるかもしれません。しかし、下足番のいる旅館や店ではお客さまにそのようなことをさせるのは、サービスが行き届いていないことになるのです。
下足番がいない旅館や居酒屋のような店では、個人宅と同じように靴を脱いで揃えれば良いのです。
目の上の人に便箋1枚の手紙を出すのは非常識です
手紙が1枚で書き終わった場合は白紙の便箋を付けて送る
携帯電話やパソコンでのメールが浸透した現代では、書くのも送るのも手間がかかる手紙は、より一層丁寧なものに感じられます。
しかし、1枚にハガキと封書と比べると、やはり封書の手紙が正式で、内容が見えるハガキは略式(カジュアル)の物とされています。
厳密なマナーでは、目上の人や改まった手紙は封書で出すべきとされています。
ハガキでも問題なのが、年賀状、暑中御見舞い、贈り物に対する礼状などです。
ちなみに、送り状への礼状にハガキが許容されているのは、早く出すことが重視されているからです。そのため、品物が届いてから3日以内に礼状を出すのがマナーとされています。
封書の手紙には守るべき形式があります。
まず、便箋ですが、白無地が基本とされています。
使う筆記具には格というものがあり、毛筆が一番格が高く、以下、筆ペン、万年筆、水性ボールペン、フェルトペン、ボールペンの順番となっています。当たり前ですが、鉛筆、シャープペンシルはNGです。
また、黒が基本ですが、紺と青でも構いません。気持ちを込めてキレイな字で書きましょう。
次に封筒ですが、封筒は二重になっている白封筒を使い、便箋は2枚以上で送ります。
万が一、手紙が1枚で書き終わってしまった場合は、お見舞いやお悔やみと区別する意味で、白紙の便箋1枚を添えて送るという慣習があります。
しかし、本来は1枚にならないように、何かしらの文章を加える、あるいは上手に改行してバランスよく2枚以上にする配慮が必要です。
お見舞いやお悔やみの際に出す手紙の場合は、不幸が重なることを連想させるので、便箋は1枚で終えるようにすることが重要です。白封筒も二重でないものを使うようにしましょう。
現代では、メールやLINEなどのSNSによる連絡が主流であり、なかなか封書をしたためる(書く)という行為を行うシーンに遭遇することはまずないと思われます。
そのようなマナーを詳細までしっかり覚えるということは、とても難しいですし、1年に1回遭遇するかどうかのものですので、まず、覚えることはできないと思います。
ですから、あぁ何かこういうシーンで気をつけなければならないものがあったような気がするという程度に覚えておくようにすると上手くいくと思います。
第2部 敬語の使い方
「了解しました」「分かりました」は、上司に対して適さない言葉遣いです
いつもつかっているフレーズだから、ついつい・・・
この「了解しました」については、最近、ネットニュースで話題となっていたものです。
ビジネスシーンにおいては、短い受け答えの一言で、相手の気持ちやあなたを見る目が一変してしまうことがあります。
知らず知らず頻繁に使っている言葉が、もし目上の方に対して失礼にあたる表現だとしたら、おのずと印象は悪くなってしまうことになります。
「了解しました」は、その代表格と言える言葉です。
打ち合わせの席やメールの返信で、お客さまや上司に対して無意識に使っていないでしょうか?
「了解」とは「理解した」という意味です。しかし、そこには尊敬のニュアンスが含まれてはいないのです。文末は「〜ました」と丁寧語になっているものの、ど同僚や部下に使う言葉となります。
では、このような場合はどのように返事をしたら良いのでしょうか?
「かしこまりました」「承知いたしました」
です。
「かしこまりました」は、内容を理解したうえで拝受するという意味です。また、「承知しました」は、「承る」という謙譲表現が含まれる尊敬語です。
そこまで気を使う必要はないのでは?と思うかもしれません。現代は、SNSにおけるチャットなどによって、どうしても言葉が乱れている傾向があります。この文章を書いている私も、詳しい人から見れば、おかしな日本語を使っているかもしれません。
気を使う、使わないではなく、ビジネスマンの教養として、覚えておくようにしましょう。
取引先に「お疲れさまです」、上司に「ご苦労さまです」は不適切です
短く簡潔なあいさつとして重宝していたはずなんですが…
マナーの大原則として、使い勝手が良い言葉には注意が必要です。常識と思い込んでいる言葉が、意外と非常識であることが多いからです。
例えば、職場でふだん当たり前のように交わされている「お疲れさまです」と「ご苦労さまです」があります。
上司と廊下ですれ違いざま、先輩が外出先から記者した際、
日常的にこれらの常套句としているなら、改める必要があります。
なぜなら、「お疲れさまです」「ご苦労さまです」のどとらも、目上の人が目下の人に対して用いる言葉だからです。
正しい敬語の使い方では、そのように位置づけられているのです。
しかし、昨今の風潮として、「お疲れさまです」は目上の人に対して用いても失礼ではないと言われるようになりました。確かに、私の社内でも、普通の言葉として使っています。ただ、これは、社内に限ってのことなのです。
社外の方や取引先に対して「お疲れさまです」はご法度です。
あくまで、「お疲れさま」は、身内の関係内で使うべきあいさつです。
取引先などへは「お世話になっています」「ありがとうございます」といった感謝を表す言葉を使うようにしましょう。
また、自分が上司よりも先に退社する際、「お疲れさまです」では、配慮に欠けると思われる可能性があります。「お先に失礼いたします」と、一礼してスマートに帰るのが、社会人の礼節というものでしょう。
次に、「ご苦労さまです」は、更に使い方を配慮すべきです。これは、目上の人が目下の人をねぎらう際に使う言葉なのです。
この使い方は、思い違いをしている方が多いので、注意するようにしましょう。
ですので、社内外を問わず、、目上の人に対しては不適切な表現であるため、使うべきではありません。
あいさつの言葉は、状況に合わせて、気持ちを込め適切に使うようにしましょう。

「とんでもございません」は、誤った敬語表現の一つです。
ていねいに謙遜する意図が意味不明な文言に
ら抜き言葉や省略表現、文法的に間違った言葉づかいが多く見受けられます。私たちが普段の生活の中で、正しいと信じきっている敬語にも、実は意味の通じない表現があるのです。
よく耳にする言葉だと思いますが
「とんでもございません」
「とんでもありません」
も、そのような言葉のひとつです。
相手から褒められて、つい
「とんでもございません」
と相手に対してへりくだって言った記憶のある方は多いはずです。私も思い返せば、良く使っているなぁと思ってしまいます。
この「とんでもない」とは「と(途)でもない」が変化した言葉で、思いもかけない、滅相もない、という意味を表す言葉です。
つまり
「とんでもございません」「とんでもありません」では
「ない」という形容詞を欠いた表現となるので、意味を成さなくなってしまうのです。
正しくは
「とんでもないです」
「とんでもないことです」
「とんでもないことでございます」
という表現で使うべきなのです。
更に言いますと、昔は「三辞三譲」といって、何かを勧められても三回は遠慮するのが美徳とされていました。しかし、現代では誤解を招くだけです。
「とんでもないです」と必要以上に遠慮するよりも、厚意をありがたく受け止める方が、好感を与えることでしょう。

「お客さまをお連れしました」は、どこか変な言い回し
接頭語の「お」を付けて、敬語にしたつもりなのに…
あなたが取引先の会社に着いて、社長室に通してもらう時、「社長、お客さまをお連れしました」と言われたら、どう思いますか?
何も感じない、という方は、もしかすると敬語のニュアンスを理解しておらず、同じ間違いをしている可能性があるかもしれません。
この「社長、お客さまお連れしました」という一文はどこに問題があるのでしょうか?この一文の問題点は「連れ」という言葉です。
たとえ「お」が付いても、「連れてくる」は自分と同列か、目下の関係にある人に対して用いる表現です。
しかも元来、「お連れしました」の「お〜する」は上司に対してへりくだる謙譲語であって、お客さまに対して尊敬語が使われていることにはなりません。よって、お客さまを「お連れする」のは、失礼でおかしな言い方です。
正しくは「お客さまをご案内しました」、あるいは「お客さまがお見えになりました」と表現すべきです。
「お」や「ご」を付けるのがあたり前になっている、「美化語」についてもここで確認しておきましょう。
この「美化語」とは、話している相手や第三者に敬意を表すのではなく、言葉を美しく言い換えたものです。
例えば、
「お天気」「ご祝儀」「お金」というように、接頭語を負荷するパターンの他に、
「めし」→「ご飯」、「腹」→「お腹」など、
語彙自体を言い換えるパターンがあります。
ただし、行為の主体に付けると変なものは、美化語ではありません。
「意見」「車」などは美化語ではなく、「私のご意見」「私のお車」とは言わないのです。
「お名前を頂戴できますか?」は意味が通りません
謙譲語を使い相手に敬意を表しているはずが、実は…
お決まりのフレーズとして誰の耳にも馴染んでいる(馴染んでしまっている)ビジネス慣用句に、
「お名前を頂戴できますか?」
があります。私も、普通に使っていた覚えがあります。ええ、鮮明に。
実は、この表現は、誤用なのです。知っていましたか?
本来、「頂戴」とは「もらう、受け取る」の謙譲語です。
つまり、「お名前を頂戴する」というのは、先方の名前そのものを自分が受け取るという意味になるので、不適切ということになります。
その理由は、名前はもらうものではなく、聞いたり、たずねたりするものだからです。
正しくは、
「お名前をおきかせいただけますか?」
あるいは
「お名前をうかがってよろしいでしょうか?」
となります。
電話応対で非常に使う言い回しですので、この際覚えて、習慣化して口からすっと出るように覚えておきましょう。
実際に対面して会話をする際、相手の名前を名刺で初見する場合も多いかと思います。
その場合の名刺は物理的に「受け取る」物なので「(名刺を)頂戴いたします」で問題ないことになります。

「つまらない物ですが」は、せっかくの土産を台無しにする
へりくだった一言が、かえって印象を悪くする
上司のご自宅へ招かれた際、手ぶらで訪問するのも気が引けると思い、お菓子などを手土産として持参した経験は誰にでもあるはずです。また、出張などで、遠方の取引先などに手土産持参で表敬訪問することもあるでしょう。
問題は、その手土産を先方へ渡す際の言い方です。
一般的に、かつては「つまらないものですが」「お口に合わないかもしれませんが」と、へりくだった言い回しを使い渡すのがよいとされてきました。
しかし、最近では、卑下し過ぎたネガティブな表現はかえって相手に失礼な印象を与え、特にお客さまなど、目上の方に渡す際は、マナーとしても不適切だと言われるようになりました。
たしかに「つまらないものですが」と贈り物を手渡されれば、(どうしてつまらないものを持ってきたのか…)と相手が言葉通りに受け取っても仕方がありません。
よく、漫画などで、笑い話として、相手が「つまらないものなら持ってこないで…」なんて言うシーンや、子供が「あの人、つまらないものを持って来たんだって!」なんてシーンを目にしたことがある人も多いと思いますが、正に最近ではそういうふうに思われてしまうようになってきているのです。
では、こういう場合、どのような言い方で渡せば、双方が気持ちよくやり取りができるのでしょうか?
「ささやかな物ですが」
「心ばかりのものですが」
このように言えば、謙遜の意を伝えつつも、否定的な表現には聞こえないことでしょう。
さらに最近では、よりポジティブな表現で渡す方も増えています。
例えば、「評判のお菓子と聞きましたので」「私も使ってみてよかったので」と切り出せば、贈り手のお勧めする気持ちがやわらかく伝わるでしょう。
反対に使ってはいけないのが、
手土産の価格やブランドを強調するような言い回しです。
自慢や誇張を避け、相手の好みや自身の実感を踏まえて選んだという思いを伝える程度にとどめるのが良いでしょう。
「お分かりいただけたでしょうか?」は、相手に尊大な印象を与える言葉
慣習的に用いられているから、つい使ってしまうNGワード
相手に理解や同意を求める言い方として、
「お分かりいただけたでしょうか」というフレーズを耳にしたことがある方、つい使ってしまう方も多いのではないでしょうか?
この「お分かりいただけたでしょうか」という言葉。
語調こそ丁寧に聞こえますが 、実はこの言葉は、正しい敬語ではないのです。
それ以上に、言っている本人に悪気はなくても、相手を不快にさせてしまう失礼な表現にあたるのです。
そもそも「分かる」とは、目上の人に対して使う言葉としては、非常に不適切な言葉なのです。
それは、「分かる?」という疑問形は高圧的で、上から見下した感じや尊大な印象を与えてしまうからです。
自分より立場が上の人から言われても、そのように感じるので、まして部下や目下の人から言われたらなおさら不快に感じつことでしょう。
この場合には、
「ご理解いただけたでしょうか?」
「ご不明な点はありませんか?」
というのが適切な表現です。

「すみません」「ごめんなさい」は、ビジネスにふさわしくない言葉
軽々しく口にすれば、かえってマイナスイメージを与えるかも?
お礼やお詫びの気持ちを伝える時、または、何かを依頼する際に添える言葉に「すみません」がありますよね。
使用頻度の高い、便利な言葉であり、私も多分日常で一番多く使う言葉であろうと思います。
しかし、本来「すみません」は、お詫びの心が尽くしきれておらず、謝意がきちんと済んでいないと思われがちな、微妙な言葉なのです。
ですので、「すみません」を「許してください」の代用語として使うのは、相手に対して失礼にあたるのです。
「ごめんなさい」も同様となります。「ごめんなさい」は軽い謝罪やお断りの言葉として使用されることが多く、ちゃんと謝罪しているように感じられますが、その逆で、反省度が低く、誠意が感じられない謝罪と受け取られることがあるのです。
このような言葉なので、ビジネスマナーとして、会社を代表する公的な場面で謝る際には使うべきではないでしょう。
一般的には、ビジネスシーンで謝罪を表す際には、
「申し訳ございません」
という表現が適切でしょう。
更に深く謝罪しなければならない場合には、一歩踏み込んで
「今後、このような不手際がないよう注意いたします」
「私の考えが及ばず、心からお詫び申し上げます」
という言葉を使い、反省の真剣さを訴えるのがようでしょう。
ミスは誰でも犯してしまうものですが、ミスを認めしっかる謝罪する本人の気持ちをいかにして、相手に伝えるかが肝になってくるのです。

「大変参考になりました」は謙遜した言い回しではありません
相手に感謝の意を表すはずが、相手を下に見ることになる
「○○の件、どうもありがとうございます。大変参考になりました」
目上の方から何か教えてもらったり、アドバイスを受けたりした時、つい口から出そうなのが、この文言です。
実は不適切な文言なんです。
「参考になりました」という言葉は、「自分の考えを決める時の足しにする」という意味合いがあります。同時に、相手をこちらから「評価する」というニュアンスも含まれるのです。
とても、衝撃的な内容だと思いませんか?
当然、目下の者が目上の方を評価することは、非常に失礼な印象を与えます。
また「参考になりました」と言われると、相手は「あくまでも参考程度だったのか」「すでに自分の考えを明確に持っていて、たいして役に立たなかったんだ」と受け止める可能性があります。
相手から学ぶことができたという感謝の意を表すなら
「大変勉強になりました」
という表現を使うようにするのが良いでしょう。
「お間違いございませんか?」という言葉は不適切な表現?
尊敬語を意識した丁重な言い回しだが??
相手に間違いやミスがないかを問う際、つい
「お間違いございませんか?」
と言っていませんか?
特にビジネスの場において、この表現はふさわしくありません。
とはいえ、この敬語のどの部分が間違っているのでしょうか?
間違いがないかを確認するとき、間違いをしている恐れがあるのは自分自身です。しかし、「間違い」に「お」を付けて尊敬語にする必要はないのです。
自分自身の持ち物や行動に「お」を付けるのは、敬語として間違っているのです。
加えて、わざわざ「お」を付けると、相手の間違いを指摘しているようなニュアンスになってしまう恐れもあります。
敬語というものは、私も経験がありますが、無理に丁寧に表現しようとすれば、かえっておかしな言い方になってしまいがちです。
この場合の適切な言い方は、
「こちらでよろしいでしょうか?」
「間違いございませんか?」
となります。
これであれば、相手は間違いを指摘されている感じを受けず、すんなりと意味を汲み取ってくれることでしょう。
なんでも「お」を付ければいいと思っている方もいますが、適切な使い方を覚えていきましょう。

「知らないです」「分からないです」は、どちらも敬語表現ではないのです。
「です」を付けることで敬語だと思っていたら…
「知る」の否定形である「知らない」や「分からない」の敬語を正しく使える人はどのくらいいるでしょうか?
「知らないです」「分からないです」は、どちらも丁寧語なのです。
それでは、「知らない」「分からない」を敬語にすると、
「知る」の謙譲語は「存ずる」「存じ上げる」ですので、
その否定は、
「存じません」「存じ上げません」
になります。
さらに「分からない」を「分かりかねる」、
「存じません」を「存じかねる」という表現にすることもできますが、
どちらも、イマイチ、冷たいと感じませんか?
そこで、
「〜おります」を文末に付け加えると、より柔らかな表現になり、
印象がよくなります。
例えば、「存じ上げておりません」と謙譲語で言えば、かんばり丁寧で、気を配った表現になります。
しっかりとした敬語表現を使うことも大切ですが、
大切なのは「知らない」「分からない」だけで済ますことなく、
「分かる者に替わります」
「お調べしてお伝えします」
と親切に対応することが大切です。
つまり、相手を思う気持ちを行動で表すことが大切です。
「お立ちになられる」は不適切な二重敬語です
敬意を表そうとするあまり過剰にていねいな言葉に
ビジネスシーンでは、敬語を使うことが普通です。
普段使い慣れない敬語を、いきなりビジネスシーンで口にすると、
時に誤った表現で、おかしな言葉を使うばかりか、印象を悪くしてしまうケースがあります。
特に取引先で上司が同席するようなケースでは、敬意を表そうとていねいさを心がけるあまりに、つい不必要な敬語を重ねてしまいがちです。
これは、いわゆる二重敬語というものです。
ひとつの動詞に、同じ種類の敬語を二重に使った間違いを指します。
過剰に敬語を使うと、かえって内容が分かりにくくなり、相手は不快に感じるものです。
二重敬語は使っている本人には分かりにくいものですが、聞かされている方は、とても変に感じるものです。社会人としての教養に欠けるものですので、言葉の区別を熟知しましょう。
では、間違いやすい代表的な二重敬語についてみていきましょう。
①「何か召し上がられますか?」
心あたりがある方はいるのではないでしょうか?これは「食べる」が「召し上がる」と尊敬語になっているうえ、さらに「〜られる」まで付いた二重敬語です。
正しくは、
「何か召し上がりますか?」
となります。
②「お立ちになられる」
これも使っている人が多いのではないでしょうか?「立つ」の正しい敬語は「お立ちになる」「立たれる」です。この場合はその両方が付いてしまっているので、明らかに二重敬語です。
③「ご覧になられる」
これも良く聞く二重敬語です。これも「見る」が「ご覧になる」となり、さらに「〜られる」が付いた二重敬語になっています。
正しくは、
「ご覧になる」
です。
最後に、過剰な敬語を回避するには、敬語はなるべくひとつの文章に一つとして、それを文末にもってくるようにすると良いです。
「社長は席を立って、ご覧になった」です。
「社長は席をお立ちになられて、ご覧になられた」だと変な表現なのが一目瞭然ですよね!
「〜のほう」というのは、敬語ではありません
ていねいに聞こえると誤解し、ついつい使ってしまう
「コーヒーのほうお持ち帰りにしますか?」
「おつりのほうは、13円となります」
「お持ち帰りの袋のほうは必要ですか?」
など、「〜のほう」という言葉を普段でも耳にする方は多いでしょう。
いつの頃からか若者言葉として根付くようになり、気が付けば商談や接客などのビジネスシーンでも耳にするようになっています。
この「〜ほう」は、慎み深い気持ちを表そうとして、あるいはニュアンスをぼかして、ていねいさを演出するために、使われているようですが、耳障りな日本語であり、一番気になる日本語でしょう。
お分かりになるとは思いますが、「〜ほう」とはそもそも、おおよその方角を指し示す言葉です。あるいは、2個以上の物がある場合、それらを比較する際に使う言葉です。
ところが、レストランなどに入っても、「お水の方はいかがでしょうか?」「こちら、おつりのほうのお返しになります」というように、必要ではないのに「〜のほう」を付けた接客語が使われています。
ビジネスシーンにおいて、このような学生気分の抜けない言葉づかいをすることは、とても恥ずかしいことであることを認識し、くれぐれも気を付けましょう。
「〜させていただく」は、よく使ってしまう間違った敬語
使い勝手のよい謙譲語は、誤解を生むことがあるので注意
「させていただく症候群」という言葉が生まれるほど、「〜させていただく」を多用する人が急増しています。
皆さんもビジネスシーンや普段の生活の中で、「あれっ?」「やりすぎ?」と思うような「〜させていただく」を耳にしたことがあるでしょう。また、使ってしまっている方みお多いのではないでしょうか?
たしかに、ていねいに聞こえますし、相手を尊重しているニュアンスが伝わるものの、使い過ぎると文意が分かりにくくなって、伝えたいことがあいまいになります。
本来は、「〜させていただく」の適切な用途は、自分の行動が相手の許可を得て行われる場合の、へりくだった言い方なのです。
しかし、最近では、
「拝見させていただきます」
「メールを送らせていただきます」
「判断させていただきます」
といった言い回しをよく耳にします。あなたも使ってはいないでしょうか?
どれも、間違った敬語です。
「拝見〜」は、それ自体がへりくだった表現であり、二重敬語になっています。「メール〜」は、メールを送る行為に相手側の許可は不要であり、誤った使い方です。「判断〜」についても同様です。判断とは自分で行うことであって、相手の許可はいらないため「させていただく」必要はありません。
一方、「〜させていただく」は謙譲語ですが、たとえば「来週、お休みさせていただきます」という言い方に違和感を感じませんか?
ビジネスシーンで休暇に許可は必要ですが、この言い方だと休みを勝手に宣告されているように取られる可能性があります。
この場合は、「お休みをいただいてもよろしいでしょうか?」とていねいに話すことで十分敬意は伝わります。
このように、相手を敬う言葉を使用しているはずが、逆にぶしつけな印象を与える場合もあるため、必要以上に多用しないことがポイントでしょう。
「こちら〜になります」も不思議な日本語表現代表
周知の言葉づかいとして、口癖のように言う人も
以前ご説明した「〜のほう」と同じく、敬語に聞こえる不思議な、誤った日本語表現の代表が、
「こちら〜になります」
です。
誰もが一度は耳にしたことがある、使ってしまったことのある独特のフレーズでなないですか?それほど世の中に広まっている言い方ですね。
まず、基本として、文法的に「〜になります」とは、複数の意味を持つ多義語動詞「なる」を変化させた言葉です。代表的な意味は『今までと違った状態や形に変わる』です。
従って
「〜になります」とは、既存の形から変化を遂げた場合に用いる表現と言って良いのです。
しかし、現実は違います。
例えば、
○:ここは全席禁煙でございます。
×:こちら、全席禁煙になります。
○:前菜の盛り合わせでございます。
×:前菜の盛り合わせになります。
と言う人がいます。間違ったフレーズに聞こえない、なんだか、ていねいなフレーズに聞こえてしまうのが、やっかいなところです。
「なる」は状態の変化を表すので、
「課長から部長になります」
「開業して10年になります」
という使い方は間違いではありません。
ビジネスマンとして、このような日本語を話していれば、高い評価を得られません。間違って聞こえない表現ではありますが、正しく表現を理解し、ビジネスシーンで使用することが大切です。

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